日本に住んでいる以上、天災に悩まされることは決して珍しくありません。ここ数年で日本へ接近した台風の数は、年間平均で約11.5個となっており、昨年(令和6年)の台風の数は接近数が11個、その内の上陸数が2個とほぼ平均となっていました。また、7月から9月にかけてはゲリラ豪雨の可能性が高い時期となります。令和7年のゲリラ豪雨予測発生回数は78,000回、決して少なくないのです。
もしも天災被害を受けて車が冠水して廃車になったら、どのように対応する必要があるのでしょうか。こちらの記事では、台風や豪雨災害による冠水車の廃車方法について解説します。

ゲリラ豪雨が車の運転者にとって危険な理由
短時間に予測できないほどの雨が降り、道路が持っている路面排水能力を降雨量が上回ってしまうと、路上冠水の被害が発生します。雨の時は屋根がある車内にいれば安全と思われる方も多いと思いますが、運転中に急に天候が変わり路上冠水することで、一気に危険性が高まるかもしれません。こちらでは「ゲリラ豪雨と車の運転」について解説します。
ゲリラ豪雨発生の仕組み

ゲリラ豪雨とは、局地的大雨と呼ばれる大雨被害のことです。狭い範囲(散在する降水域において20~30km四方の広さ)で、短時間に大雨が降ることを指します。豪雨とは言うものの、特定の雨量の基準値は決められていません。
ゲリラ豪雨が発生する仕組みは、地上付近の空気が温かく湿っている場所のはるか上空に寒気が入りこみ、大気の状態が不安定になることで、地上付近の空気が気流に乗って上昇します。すると空気中にできた水蒸気は固まって一つになり、積乱雲へと変わっていきます。積乱雲の特徴は、非常に大きいことと、上に向かって縦型に成長するということです。雨や雷を伴って発達した積乱雲により、局地的に大雨が降ることをゲリラ豪雨と言います。
日本国内は、7月後半から9月にかけて太平洋高気圧によって暖かく温った空気が海上で発生し、上空に冷たい空気が入り込みやすい気候のため、ゲリラ豪雨の発生率は特に夏が高い傾向となっています。
ゲリラ豪雨時は通行危険なアンダーパス
台風やゲリラ豪雨などによって局地的に大雨が降り、道路上に溜まった雨水が路面の排水機能を凌駕してしまうと、道路であふれた雨水が出口を求めて川のようになったり、アンダーパスなど道路の高さが低いところでは雨水が溜まったことで、15cm以上の路面冠水を引き起こす可能性があります。
特に都市部で道路と鉄道等が交差する場所では、平面交差にしてしまうと渋滞や事故が起こる可能性が高くなるため、立体交差にすることで交通の流れをスムーズにできるように、わざと道路を低くしたアンダーパスが多数設置されています。
このアンダーパス侵入時、侵入する車の運転席からは道路奥との高低差が分かりづらいため、路面冠水していることに気づかず車を進めてしまう場合があります。アンダーパス内が15cm以上冠水していると、進入した車は故障して動けなくなり、立ち往生してしまう可能性が高く、車に閉じ込められたドライバーの死亡事故も発生しています。
アンダーパスや冠水の可能性が高いとされる路面が低くなるところでは、雨量が多くなると事前に通行止め規制を行っている場合もありますが、ゲリラ豪雨など突然の大雨で対応が間に合わないこともありますので、雨天時は迂回をして通行しないようにするなど、予め危険を回避して運転できると良いでしょう。
もしも豪雨で車が冠水してしまったら

豪雨被害で冠水車になってしまったら、どうすべきか悩まれる方も多いでしょう。
車には愛車という言葉もあり、購入後は愛着をもって大切にメンテナンスを行い、長年乗り続けたいという方が少なくありません。天災など避けることができない被害に遭って冠水車となっても、動くのであれば乗り続けたい、修理をして走行できるのなら廃車を避けたいと考えるでしょう。しかし、エンジンがかかって動力源は問題なかったとしても、冠水車は廃車するしかない場合もあります。
まずは豪雨被害に遭った時の車の所有者の対応について解説します。
任意の車両保険を確認する
車が冠水車になってしまったら、最初に任意保険の加入内容を確認することが第一ポイントです。台風や豪雨は天災ですので、基本的には任意保険の保険適用内となります。
任意の車両保険では、補償範囲を限定し保険料を抑えたエコノミー型と、あらゆる事故に対応する一般型のどちらかを選ぶことができますが、どちらを選んでも豪雨や台風等による車の損害は補償範囲内とされています。台風の場合は冠水だけでなく、飛来物や落下物によるキズや土砂崩れの場合も保険適応されます。
通常は、事故等で保険金を受け取ると等級が3段階下がってしまうのですが、台風のような自然災害ですと1段階で済みます。しかし、等級の適応は1年間のみなので注意が必要です。
保険金につきましては、修理が必要な部分が保証されますがエンジンに損傷を負い修理が不可能となっている場合や、修理費用が保険適用額を超えた場合は全損扱いとなります。車が全損状態となった場合は、自己負担となる免責金額はひかれませんので、設定した保険金額によっては修理費用や部品交換費用に足りない場合があります。
修理コストが高く廃車せざるを得ないことも
冠水してしまった車を走行できる状態まで回復させるには、修理に多大なコストがかかる可能性が高くなります。
冠水の度合いにもよりますが、冠水車は車の骨格や車内のフロアシートなど、様々な部分に深刻なダメージを負っていることが多いため、修理費用が高額になることがほとんどとなっています。冠水車の修理費相場としては、フロアまで浸水した場合は最低でも50万円から、シートまで浸水した場合は最低100万円からとなっています。
台風や豪雨で冠水した場合は天災被害ですので、任意の車両保険に加入しているのであれば修理費をある程度カバーすることはできますが、保険を利用することで等級が下がる場合があり翌年度から保険料が高くなるため、結果的に損をしてしまったという場合もあります。どちらを選択するかを検討するためにも、まずは見積もりをとってみましょう。
修理しても100%回復は難しい
実は冠水の状態次第では、修理をしたとしても100%の現状回復は難しい場合があります。その理由は大きく分けて3つあります。
カビが発生して臭いが残る
冠水車の場合、海水や川水、下水道や汚水などが混ざった水に水没した可能性があります。車内まで浸水すると、中のシートやフロアに雑菌等が繁殖し、カビが発生して異臭が残ることもあります。
車両クリーニングに出して消臭することもできますが、高額なクリーニング代がかかりますし、クリーニングできない内部の部品やパーツに錆が発生していると、車内からではなくエアコン作動時やトランクルームの内部から異臭を放つケースも報告されています。
走行機能や耐久性に影響がでる骨格損傷の場合がある
冠水した路面を走行すると、足回りを取られて流されている時に気づかず障害物にぶつかっていることもあり、損傷の酷さから走行機能に影響が出ることもあります。車は骨格(フレーム)にゆがみ等の損傷があると、最初は乗り続けていられても、突然故障したり不動車になってしまうことがあるのです。
特に冠水車の場合は外見からはわかりにくい劣化もあり、一見無事に見えても内部パーツでは腐敗が進んでいることもあります。骨格に損傷を負った場合は、修理や交換をしても完全に元に戻ることはありませんし、車の価値も大きく下がってしまうでしょう。
電気系統が故障して人体や車体に危険が及ぶことも
車の電気系統まで水没すると、電気系統が故障し、火災や漏電によるリスクも増します。特に年式の新しい車ほど、エンジン周辺以外にもダッシュボードドアの内部といった様々な場所に電気の配線が通っています。冠水した場合は電気系統のショートや誤作動が起きたりして故障や火災発生に至ることがあります。また、無理に動かそうとすると漏電部分に触れてしまい、感電する危険性もあります。車体だけでなく、車を動かそうとした人まで重傷を負う可能性もあり、非常に危険です。このような事態を避けるため、冠水車のエンジンは不用意にかけないように言われています。
劣化スピードが速まり、残存価値も下がる
上記でご紹介した通り、冠水車は受けるダメージが計り知れないため、いつ不具合が出てもおかしくない状況となります。水に浸かっただけでも部品等の劣化スピードは増しますが、冠水時に海水に浸かったとなると、車体への被害は甚大で劣化のスピードは更に速くなります。
特に台風の場合は海水を巻き上げて進んでいるため、雨や風に含まれる海水で車の塩害被害が報告されることもあります。台風によって冠水車の状態になると、損傷は車の機関部分に甚大な損傷を与えている可能性が高いと考えた方がいいでしょう。冠水や塩害被害が出ると、車の残存価値も下がりリセールバリューも厳しくなります。
車が天災被害によって所在不明になってしまった時にも手続きは必要です。保険適応を確認した後、廃車の準備となりますが、車が洪水で流されて行方不明で手元にない場合は廃車が不可能となります。災害で行方不明となった場合は罹災証明書を発行し、永久抹消登録をしましょう。永久抹消登録手続きを行うと、車検が残っている車の重量税の還付を受け取ることができます。
冠水車を廃車する時の業者選びのポイント

車の修理や維持が厳しく、冠水車を廃車にする場合の業者選びのポイントについてご紹介します。
解体する工場を自社にもっている
解体する工場を自社に持っている業者を選びましょう。冠水車になった場合、車のほとんどの部分は解体後に資源として再利用されます。そうなった場合自社に工場が無い業者ですと、解体業者に依頼するため、解体費用や仲介費用を請求されることがあります。余計な費用をかけたくないとお考えの方は、公式サイトなどで自社で解体まで請け負ってくれる業者かどうか確認することが大切になります。
事故車や冠水車の引取実績が多くある
事故車や冠水車の引取実績のある業者の場合ですと、価値があると見なして引取をしてくれるだけでなく、買取金を支払ってくれる業者もございます。水没車の引取実績も多数ございますので、0円以上で買取金額をつけて無料引き取りを行います。
手続きや引取りを無料で行ってくれる
手続きや引取りを無料で行ってくれる業者を選ぶことで負担を軽減できます。ディーラーや中古車買取業者に依頼した場合ですと、中古車として販売するのが前提で引取りを行いますので中古車として販売出来ない水没車は価値がないと見なされてしまい、解体費用や引取費用を請求されてしまうことがあります。この点、廃車買取業者ですと、素材やパーツとしての販路を保持しておりますので価値を見出して買取をするだけでなく、引取にかかるレッカー代が通常数万円かかるところを費用をかけずに依頼していただくことが可能です。
まとめ
ゲリラ豪雨等の天災被害に巻き込まれて車が冠水してしまった場合は、廃車するかどうかは、苦渋の決断でなかなか踏み切れない方も多いかと思います。しかしながら、故障や不具合が見られなくとも廃車にした方が結果的には良かったというケースもあります。まずは、ゲリラ豪雨時などに車を運転されている場合は、冠水被害に遭わないために冠水した道路や、冠水の可能性がある道路は避けれるように、事前に道路情報や道路状況を知っておくようにしましょう。