令和7年12月から「自動ブレーキ義務化」の対象車種が拡大します。自動ブレーキと聞くと自動運転システムの一つかな？と思われるかもしれませんが、「衝突被害軽減ブレーキ」と言い換えるとすでにご存じの方も多いのではないでしょうか。
こちらでは、自動ブレーキ備付け義務化の対象車種が拡大する適用時期や、衝突被害軽減ブレーキ「AEBS」はどんな基準を満たすと認定されるのか、について詳しく解説します。
2025年の自動ブレーキ義務化はいつから？
2025年の自動ブレーキ義務化の適用車の拡大は、12月からとなっています。12月からは、継続生産モデルの新車にも自動ブレーキ義務化の適用がスタートしました。それまでは新型モデルの新車のみ適用の対象車種になっていましたが、適用幅が拡大したことで、安全性の高い新車を購入するにあたって選択肢が増えています。
令和3年11月の新型車から自動ブレーキ義務化スタート
自動ブレーキ義務化の適用時期に関しては、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示の一部改正」により下記に決定しています。
| 国産車 | 輸入車 | |
|---|---|---|
| 新型車 | 令和3年11月 | 令和6年7月 |
| 継続生産車 | 令和7年12月 | 令和8年7月 |
令和2年1月に未就学児および高齢運転者の交通安全緊急対策を踏まえ、「乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する国内保安基準」が決定しました。この保安基準を満たす自動ブレーキの備え付けは義務となり、義務化の適用時期については段階を踏んで対象車種を拡大することも併せて決まっています。
義務付けされる自動ブレーキの保安基準
道路運送車両の保安基準が改正されたことで、新車を対象に義務づけられる衝突被害軽減ブレーキ（自動ブレーキ）の認定基準は、以下の3つとなっています。
- 静止車両・走行車両・歩行者に対する試験を行い、決められた制動要件を満たすこと
- エンジン始動の度にシステムが自動的に起動し、スタンバイしていること
- 緊急制動の0.8秒前（対歩行者の場合、緊急制動開始）までに警報すること
➊の静止車両・走行車両・歩行者に対する試験の方法は以下の内容となります。
【静止している前方車両】に対し、試験車両が50km/hのスピードで近づいた時に衝突しない、または衝突時の速度が20km/h以下になること
【20km/hで走る車両】に対し、試験車両が50km/hのスピードで近づいた時に衝突しないこと
【5km/hで道を徒歩で横断する6歳児相当のダミー（歩行者）】に対し、試験車両が20km/hのスピードで近づいた時に衝突しないこと
また、その歩行者に対して運転者が衝突回避操作を促すための警報が作動すること
義務化された衝突被害軽減ブレーキ（AEBS）とは
義務化された衝突被害軽減ブレーキは、自動車運転支援システムの装備の一つとして着実に増加傾向にあります。搭載車両は年々増加しており、普及率も上がっています。2023年時点での対車両衝突被害軽減ブレーキの普及率は99％、対自転車衝突被害軽減ブレーキの普及率は72％と高い数値です。2013年時点の普及率が15.4％だったことから考えると、10年間で99％まで到達していて、ほとんどの自動車に搭載されるようになったことがわかります。
AEBSとは何の略？
自動ブレーキは、日本では衝突被害軽減ブレーキと呼ぶことが一般的ですが、国際基準として自動車基準調和世界フォーラムで定義されている自動ブレーキ装置の呼称は、【AEBS（先進緊急ブレーキシステム】となっています。AEBSは、Advanced Emergency Braking Systemの略称で、先進緊急ブレーキシステムという意味があります。
各自動車メーカーのAEBSの呼び方
衝突被害軽減ブレーキの義務化がされたことで、各自動車メーカーから販売される新車にも同装置が付いているはずですが、メーカーによって名称が異なり一見すると搭載がないように思うことがあるかもしれません。各メーカーごとのAEBS（衝突被害軽減ブレーキ）の呼び方をご紹介します。
| 自動車メーカー | 衝突被害軽減ブレーキの名称 |
|---|---|
| トヨタ | プリクラッシュセーフティ、スマートアシストの衝突回避支援システム |
| ダイハツ | スマートアシストの衝突回避支援機能 |
| スズキ | セーフティサポート、デュアルカメラブレーキサポート |
| ホンダ | 衝突軽減ブレーキ、CMBS（Collision Mitigation Brake System） |
| マツダ | i-ACTIVSENSEのSBS（Smart Brake Support） |
| 三菱 | FCM（Forward Collision Mitigation） |
| スバル | アイサイトの衝突回避システム |
AEBSとAEBS2の違い
国土交通省による衝突被害軽減ブレーキの性能評価認定基準として、AEBSとAEBS2が設定されています。それぞれの違いというと、【AEBSは（対車両）衝突被害軽減ブレーキの認定が受けられるもの】、【AEBS2は（対歩行者）衝突被害軽減ブレーキの認定が受けられるもの】となります。
特にAEBS2は、先進の運転支援システムによって対歩行者への衝突事故による被害を無くす、または衝突事故による被害を減少するため、万が一の際には自動車が歩行者をセンサーによって検知し、自動ブレーキの制御をかけるシステムとなっています。
国土交通省では前項でご紹介した試験方法に則って合格した車両を認定車種として公表しており、各メーカー・各車種でどの車が認定基準を満たしているかどうかは、国土交通省のサイトまたは各メーカーサイトで確認が可能です。
まとめ
令和7年12月からは継続生産車も適用開始となったことで、同年12月以降に新車販売される車は新型モデル・継続生産モデル問わず「保安基準を満たす自動ブレーキ」が備え付けられていることになります。標準搭載となることで、より安全性の高い車の購入がしやすくなったといえるでしょう。車の購入や買い替えを検討されている方は、ぜひ各自動車メーカーの先進安全運転支援システムをチェックしてみてください。
