車の運転中、どれだけ運転者が気を付けていても事故に巻き込まれてしまう可能性はあります。万が一事故に遭ってしまった時、できる限り被害を軽減できる車はあるのでしょうか。
運転者や同乗者だけでなく、歩行者や他の車両に対しても交通事故が起こってしまった時の被害を予防したり、軽減するための最新の安全技術が搭載されている安全な車をランキング順に、こちらで詳しく解説します。

JNCAPとは?どんな内容を評価しているの?
国内生産の新型車の安全性能を評価する、「JNCAP」という評価プログラムをご存知でしょうか。
こちらの評価プログラム「JNCAP」では、前年度中に販売された国産新型車で最も総合評価の得点を獲得した車に対し、表彰式が毎年5月末に行われます。
JNCAPとは、Japan New Car Assessment Programの略称で、日本の新車の評価プログラムという意味があります。該当する年度内に新車として販売された車の安全性能の総合評価を★の数でランク分けしていて、最高評価の5つ星を獲得した車種には、ファイブスター賞が与えられています。
JNCAPを実行する機関について
JNCAPの評価テストを実行しているのは、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構のNASVA(National Agency for Automotive Safety and Victims’ Aid/自動車の安全と被害者支援のための国の行政機関)です。NASVA(以降ナスバ)は、自動車事故ゼロの社会を目指している独立行政法人で、自動車事故の防止と被害者支援に取り組んでいます。その取り組みの一つとして、安全な車選びのために行っている評価プログラムとなっています。
自動車製造メーカーに対し、安全な自動車開発を促進するための評価プログラムとなっており、国内で生産されている新車に対して、衝突安全性能(衝突被害軽減ブレーキの性能、乗員保護性能、歩行者保護性能)と予防安全性能および事故自動緊急通報装置の評価を点数化します。その評価項目から総合得点を算出して5段階に分け、総合評価の結果を公表しています。
各安全性能の合計得点と最終ランク分けについて
2024年に実施された各評価プログラムごとのランク分けと点数配分について、各自どのくらいの得点を取ることで最高評価のファイブスター賞を獲得できるのか、下記一覧表でご紹介します。
衝突安全性能と予防安全性能の評価のランク分けと点数一覧
評価結果 | 予防安全性能 85.8点満点中 | 衝突安全性能 100点満点中 |
---|---|---|
Aランク | 69.44点以上 | 84.63点以上 |
Bランク | 50.20点以上~69.44点未満 | 71.89点以上~84.63点未満 |
Cランク | 33.20点以上~50.20点未満 | 59.07点以上~71.89点未満 |
Dランク | 16.52点以上~33.20点未満 | 46.33点以上~59.07点未満 |
Eランク | 16.52点未満 | 46.33点未満 |
安全性能の総合評価得点数によるランク配分表
総合評価によるランク分けは、★5~★1までの5段階評価で行われます。最高評価の★5(ファイブスター)賞については、自動車安全性能2024による各評価プログラムの最高Aランク評価に加えて、事故自動緊急通報装置を備えていることが必須要件となっています。
評価結果 | 予防安全性能と衝突安全性能の合計得点 |
---|---|
★★★★★ | 154.07点以上 |
★★★★ | 122.09点以上 |
★★★ | 92.27点以上 |
★★ | 62.85点以上 |
★ | 62.85点未満 |
令和7年度最新版の安全な車ランキング

今回は、国土交通省とナスバが行った2024JNCAPで安全性能の総合評価が高かった車種を、評価結果を基にしたランキング順にご紹介したいと思います。総合評価結果★5はファイブスター賞を獲得しています。
2024JNCAP結果 | メーカー/車種 | 総合評価 | 得点率 |
---|---|---|---|
1 | トヨタ/クラウン(セダン) | ★★★★★ | 95%(184.30/193.8点) |
2 | マツダ/CX-80 | ★★★★★ | 94%(183.00/193.8点) |
3 | ホンダ/CIVIC | ★★★★★ | 94%(182.44/193.8点) |
4 | ホンダ/WR-V | ★★★★★ | 90%(176.23/193.8点) |
5 | ホンダ/FREED | ★★★★★ | 90%(175.07/193.8点) |
6 | スズキ/フロンクス | ★★★★ | 84%(163.75/193.8点) |
トヨタ・クラウン(セダン) ★★★★★ 95%(184.30/193.8点)
トヨタのクラウン(セダン)は、自動車安全性能2024年のファイブスター賞獲得車のなかでも、総合評価において最も高い得点を獲得しており、令和7年度自動車アセスメント表彰式にて「ファイブスター大賞」を受賞しました。
クラウン(セダン)には、トヨタの安全技術「Toyota Safety Sense」という予防安全パッケージが搭載されています。予防安全パッケージTSSに含まれているのは、ぶつからない、はみ出さない、ついていくなどのサポート技術や夜間の見やすさや標識の見逃し防止などによって事故を予防するためのシステムです。また、政府の交通事故防止対策の一つであるセーフティ・サポートカーS(ワイド)が、クラウンの全車が対象車となっています。
予防安全性能 | 衝突安全性能 |
---|---|
Aランク | Aランク |
97%(83.78/85.8点) | 92%(92.52/100点) |
事故自動緊急速報装置 | 先進型100%(8/8点) |
マツダ・CX-80 ★★★★★ 94%(183.00/193.8点)
マツダCX-80は、2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考車10ベストカーにも選ばれた車です。選考理由には、3列目シートまでしっかりと車内空間が確保されていて後方の同乗者まで快適であることや、精度の高い操縦性による車体との一体感ある走りが挙げられています。
CX-80に搭載される安全技術は、実際に起こっている交通事故の実態に注視し、死亡・重傷者ゼロを目指すための衝突安全性能技術となっています。また、ファイブスター賞の必須要件になった事故自動緊急速報装置は、先進型が配備されていて、ドライバーの異常時に対応するシステム(DEA)のほか、ドライバーの前方不注意や運転不適状態のときに危険を警告し、安全運転支援をするクルージング&トラフィックサポート緊急停止支援機能付きシステムとなっています。
予防安全性能 | 衝突安全性能 |
---|---|
Aランク | Aランク |
96%(82.99/85.8点) | 92%(92.01/100点) |
事故自動緊急速報装置 | 先進型100%(8/8点) |
ホンダ・CIVIC ★★★★★ 94%(182.44/193.8点)
ホンダCIVICは、ホンダが1972年から販売するロングヒットモデルで、現在は11代目です。大衆向け車両として開発され、コンパクトで乗り回しやすい車としても知られています。特に人気のRSは、6速マニュアルで走りと一体感が楽しめるスポーティグレードです。他グレードに比べて車高も低く空気抵抗を減らし、RSのみのブラック加飾エクステリアは、フロントグリルに赤色のグレード名がついた映えるデザインとなっています。
CIVICは全グレードにホンダの安全技術であるHonda SENSING(予防安全性能パッケージ)が搭載されています。前後8つのセンサー・フロントカメラ・後方のレーダーによる高い検知能力は、毎日の運転をより安全に、ヒヤリハットで事故防止へつなげています。
予防安全性能 | 衝突安全性能 |
---|---|
Aランク | Aランク |
98%(84.80/85.8点) | 89%(89.64/100点) |
事故自動緊急速報装置 | 先進型100%(8/8点) |
ホンダ・WR-V ★★★★★ 90%(176.23/193.8点)
ホンダWR-Vは、ホンダが販売するコンパクトサイズのSUVになっています。近年増えている流線形のSUVとは異なり、直角のボディが新しく感じるモデルです。SUVらしさのある高いアイポイントは取り回しも良く、アレンジ次第で大容量積載へと変更もできるため、様々な層のドライバーから人気となっています。
WR-VもCIVICと同じHonda SENSINGが標準装備です。前席用サイドエアバッグシステムと、前後席に対応したサイドカーテンエアバッグシステムは全グレードに装備されています。また、停車中に後方から追突されてしまった時に車内の人の頸部への衝撃を緩和する、フロントシートも前席に採用されています。
予防安全性能 | 衝突安全性能 |
---|---|
Aランク | Aランク |
95%(82.22/85.8点) | 86%(86.01/100点) |
事故自動緊急速報装置 | 先進型100%(8/8点) |
ホンダ・FREED ★★★★★ 90%(175.07/193.8点)
ホンダFREEDといえば、大き過ぎず小さすぎず、ちょうどいいサイズのファミリーカーとして人気があります。他の車両に比べて大きいとされるミニバンではあるもののコンパクトサイズで、3列目のシートまで同乗者がいても後席に圧迫感なく乗れます。また、2列シートにすると後方を大きくとって荷室にすることも可能となっています。
駐車場等で急な運転操作が必要になった時、パニックになって慌ててペダルを踏み間違え、ブレーキペダルのつもりで急にアクセルを強く踏み込んでしまい、踏み間違え事故に至るケースがありますが、FREEDに搭載されている急アクセル抑制機能があれば、踏み間違えの際に加速を抑制することで、急加速による大きな事故を防止することができます。
予防安全性能 | 衝突安全性能 |
---|---|
Aランク | Aランク |
98%(84.52点/85.8点) | 82%(82.55点/100点) |
事故自動緊急速報装置 | 先進型100%(8/8点) |
スズキ・フロンクス ★★★★ 84%(163.75/193.8点)
スズキのフロンクスは、全長4mを切るコンパクトサイズのSUVです。インドにあるマルチ・スズキ・インディアが製造しています。元々海外で人気が高い車種が国内へ逆輸入された形ですが、コンパクトなサイズと低重心を活かした安定した乗り心地が評価され、国内でも人気のある車種となっています。
フロンクスの安全装備というと、スズキの予防安全技術Safety Supportがあります。スズキのSSといえば、普段の街乗りでの運転サポート機能としてデュアルセンサーブレーキサポートがあります。単眼カメラとミリ波レーダーによって、右左折の際の対方向からの横断歩行者や自転車がいた場合は衝突の恐れを検知することができます。検知した際は、音とメーター表示でドライバーへ危険を知らせます。もしもご自身でブレーキペダルを踏んで速度を落とそうとした場合は、ブレーキを踏む力がアシストされますし、もしも間に合わないタイミングであった場合は、衝突被害軽減ブレーキが作動し、自動で強いブレーキがかかるようになっています。
予防安全性能 | 衝突安全性能 |
---|---|
Aランク | Aランク |
92%%(79.42/85.8点) | 76%(76.33/100点) |
事故自動緊急速報装置 | 先進型100%(8/8点) |
衝突安全性だけではない!車の最新安全サポート装備とは
アクセルとブレーキのペダル踏み間違い防止や、フロントについたセンサーによる障害物や歩行者を検知してエンジンの動力を弱め、万が一衝突してしまった時も被害を軽減する装備など、様々な衝突安全性能装置が増えてきていますが、実はこのような交通事故の防止対策とは異なる、最新の安全性能システムが新たに装備されています。
最新の安全装置「車内子供置き去り防止支援装置(システム)」
近年の夏の事故として増えているのが、夏の暑い車内での熱中症事故です。暑い車内に子供が取り残され、毎年熱中症事故が発生していることもわかっています。このような痛ましい事故を防止するため、最新の安全装置が搭載される車も増えています。
トヨタのクラウン(セダン)には、車内子供置き去り防止支援装置があります。また、マツダのCX-80には、リアシートアラート(後席に荷物等を置いたままイグニッションをオフにしてリアドアを開けないドライバーへ対し、音とメーターのテキスト表示で告知する)機能が搭載されています。
もしも車内に子供や高齢者が置き去りになってしまったら
上記のような安全装置搭載車両も増えているものの、車内に置き去りにされてしまう事故が発生する可能性はあります。もしも、車の鍵を持っている人が近くにおらず、車内に閉じ込められている状態時に、緊急時に車外へ出る方法があります。下記のステップを、本当に危険な事故が起こってしまった時のために、予め知識として取り入れておくと安心です。
- 内側から鍵を開けて出れないか確認する(全席確認)
- 近くに人がいる場合は声を出して助けを求める
- 近くに人がいない場合はクラクションを鳴らして助けを求める
- ヘッドレストを取り外してサイドガラスの窓枠に差し込み「てこ」の原理で割る
- サイドガラスが割れたらヘッドレストを使って残ったらフチのガラスを除去して脱出する
まとめ

こちらの記事では、最新の2024年の車の先進安全機能(JNCAPによる評価)を参考にして、安全な車をランキング順にご紹介しました。最新の安全装置や最新システムを搭載する車はどうしても、車体価格が高額にはなっていますが、交通事故防止と被害軽減の観点からすれば決して高いだけではない装置ばかりです。購入前の検討材料として、JNCAPの評価を確認してみることをおすすめします。