車の安全装置と聞いてどのようなものを思い浮かべますか。既に安全装置の搭載された車の生産が進んでいますが、安全装置の搭載は義務化されるのでしょうか。今乗っている車に後から取り付ける方法はあるのでしょうか。
こちらでは安全装置の種類や安全装置の搭載が義務化される時期、後付けの方法について解説していきます。
安全装置はどんな種類がある?義務化される安全装置はどれ?
安全装置はパッシブセーフティとアクティブセーフティの大きく2つの機能に分けられます。
パッシブセーフティとは事故が起こった場合の被害を最小限にとどめる機能を持つもののことをいいます。一方で、アクティブセーフティとは事故を未然に防ぐための機能を持つもののことをいいます。
こちらでは安全装置の具体的な例、義務化される安全装置の種類や時期について解説していきます。
代表的な安全装置
パッシブセーフティの代表例としては、シートベルトやエアバッグ、チャイルドシートが挙げられます。また、衝突時に車体が変形して、衝撃を吸収し、乗員の安全を確保する衝撃吸収ボディもパッシブセーフティの一つです。
一方でアクティブセーフティの代表例としては、自動車の安全技術の向上に伴って登場した自動ブレーキ(前方障害物衝突被害軽減ブレーキ)が挙げられます。
年々安全運転に関する意識が高まる中で、国土交通省においても事故の発生を未然に防ぐために、安全運転をサポートする機能を搭載したASV(先進安全自動車)の開発・普及が推進されており、今後も新たな安全装置が普及していくことが考えられます。
義務化される安全装置の種類と義務化の期限
2024年から義務化される安全装置は自動ブレーキです。日本においても国際基準に合わせるために自動ブレーキの搭載が義務づけられています。
ただしこれらは新車を買った際にのみ適応される基準であり、現在乗っている車に自動ブレーキがついている必要はありません。また、中古車を買った場合も同様に安全ブレーキを後から搭載する必要はありません。
国産車 | 輸入車 | |
新型車 | 2021年11月から | 2024年7月から |
継続生産車※ | 2025年12月から | 2026年7月から |
既存の車に安全装置を後付けする方法
事故を未然に防ぐのに有効な安全装置ですが、新車を買う以外で今乗っている車に搭載する方法はないのでしょうか。
こちらでは後付けが可能な安全装置について紹介していきます。
後付けが可能な安全装置は踏み間違い加速抑制装置
アクティブセーフティの代表例である自動ブレーキについては、基本的に後付けすることが難しくなっています。
一方で、停止している状態やゆっくり前進している状態から、アクセルとブレーキを踏み間違える衝突事故を防止する踏み間違い加速抑制装置については後付けが可能となっています。現在、国内の各メーカーが出している踏み間違い加速抑制装置の主な機能としては以下の3つが挙げられます。
障害物検知加速抑制機能 | 超音波センサーで約3m以内の障害物を検知し、万が一アクセルを強く踏み込んだ場合に加速を抑制する機能 |
踏み間違い加速抑制機能 | 障害物の有無に関わらず、アクセルを強く踏み込んだ場合に加速を抑制する機能 |
低速走行時加速抑制機能 | 低速で前進している最中に急アクセルを踏んだ場合に加速を抑制する機能 |
国内メーカーの後付けの踏み間違い加速抑制装置の機能と価格
国内の各メーカーの出している踏み間違い加速抑制装置の機能と価格は以下の通りです。
アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故で最も起こりやすいのが、駐車時にブレーキを強く踏んだつもりがアクセルを踏んでしまったというケースです。外出した際に駐車場でどちらの向きで駐車しているかなど、普段の自分の運転を振り返り、必要な機能を選択することが大切です。
トヨタ | 踏み間違い加速抑制システム | 障害物検知加速抑制機能(前方・後方)、踏み間違い加速抑制機能(前進・後退) | 38,500円(税込) |
踏み間違い加速抑制システムⅡ | 障害物検知加速抑制機能(前方)、踏み間違い加速抑制機能(前進・後退)、低速走行時加速抑制機能 | 56,100円(税込) | |
ホンダ | 踏み間違い加速抑制システム | 障害物検知加速抑制機能(前方)、踏み間違い加速抑制機能(後退) | 52,800円(税込) |
三菱 | ペダル踏み間違い時加速抑制アシスト | 障害物検知加速抑制機能(前方・後方)、踏み間違い加速抑制機能(後退) | 71,500円(税込) |
日産 | 後付け踏み間違い加速抑制アシスト | 障害物検知加速抑制機能(前方・後方)、踏み間違い加速抑制機能(後退) | 73,700円(税込) |
スズキ | ふみまちがい時加速抑制システム | 障害物検知加速抑制機能(前方・後方)、踏み間違い加速抑制機能(後退) | 63,800円(税込) 66,385円(税込) ※ |
マツダ | ペダル踏み間違い加速抑制装置 | 障害物検知加速抑制機能(前方・後方)、踏み間違い加速抑制機能(後退) | 67,100円(税込) |
SUBARU | ペダル踏み間違い時加速抑制装置 | 障害物検知加速抑制機能(前方)、踏み間違い加速抑制機能(後退) | 56,100円(税込) |
ダイハツ | ペダル踏み間違い時加速抑制装置「つくつく防止」 | 障害物検知加速抑制機能(前方・後方) | 35,200円(税込) |
価格については、発表当時のもののため現在の価格と若干のズレがあります。また、取り付け費は別途必要なため、費用の総額については、販売店にお問い合わせの際におたずねください。
踏み間違い加速抑制装置の効果
アクセルとブレーキの踏み間違いなんて早々することはないと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、交通事故分析センターによれば、ペダルの踏み間違いによる事故は2023年の1年間で3,164件、1日あたり8件以上発生しており、決して珍しいものではありません。
2020年11月に行われた国土交通省の会議によれば、車のタイプや事故の種別によって異なるものの、踏み間違い加速抑制装置を搭載することでこれらの事故の発生を半分以下に抑えることができるとされています。
自損事故の事故削減率 | 車両同士の事故の事故削減率 | |
軽乗用車 | 約53%削減 | 約75%削減 |
乗用車 | 約64%削減 | 約67%削減 |
踏み間違い加速抑制装置が正常に作動しないケースもある
踏み間違いブレーキは超音波センサーの検知しにくい場合、正常に作動しないことがあります。主に以下のケースで誤作動・不作動を起こる可能性があります。
- センサーに泥や雪、氷などが付着している場合
- 豪雨や強風などによって超音波が妨げられる場合
- 前方の障害物が針金やフェンス、標識の支柱など細長いものの場合
- 前方の壁が地面に対して直角ではなく斜めになっている場合
- 前方の障害物が人や布、生垣などの超音波が反射しにくいものの場合
- 前方の壁に対して車が垂直でない場合
- 事故などでバンパーに強い衝撃が加わった場合
この他にも装置が誤作動・不作動を起こすケースがあるため、現在お持ちの車に踏み間違い加速抑制装置を後付けする場合は、メーカーや販売店にしっかりと確認することをおすすめします。また、誤作動が起きた場合に備え、装置のオン・オフの切り替え方を覚えておくことが重要です。
まとめ
安全装置は事故の未然防止に効果的な反面、状況によって作動しないケースもあり、完全ではありません。そのため、仮に車に安全装置が付いていたとしても頼り切ってしまうのは危険です。 あくまでも事故を防ぐための一つの手段と捉え、まずは日頃から事故を起こさないように注意して運転することが大切です。