交通事故にあった際、その被害の清算として示談という形で交渉を行う場合がほとんどです。しかし、事故などにあうことがなければ示談をする機会は普段の生活にはないため、示談の経験があるという人の方が少ないのではないでしょうか?
あまり知られていない交通事故の示談交渉時の注意点や示談交渉に必要な書類について、こちらでご紹介します。
示談交渉の3つの注意点
交通事故を起こしてしまった時、被害者と加害者の被害を清算するため示談交渉を手段としてとられる方が多いでしょう。しかし、何度も経験をするようなことではありませんし、事故を起こしてしまった・事故に遭ってしまった時となると混乱していて、必要な対処ができるかどうか不安を感じる方も多いと思います。こちらでは、もしも示談交渉が必要となった時のために、注意しておきたい3つのポイントをご紹介します。
1.示談をその場でしてはいけない
まず事故が起きたその場で示談交渉を行い、確定してしまわないようにしましょう。
特に悪質な当たり屋などが行う手口として、事故を起こしてすぐに全額を賠償すると言った内容の念書に強引にサインをさせてしまうというものがあります。その場で示談を確定をしてしまうと、相手の言い値で賠償させられてしまい、払う必要のないことまで請求され、多額の賠償責任を負ってしまう可能性があるのです。
示談はその過失割合の検討や、賠償金額について慎重に検討する必要があるものです。決して事故後その場で示談を進めないように注意してください。
万が一、悪質な示談交渉を強制された場合は、弁護士などの専門家に相談した方が良いでしょう。
逆に相手が加害者の場合でも示談を強引に進めようとする場合でも、自分が支払う(任意保険に加入していない場合など)賠償額を低くしようと目論んでいる可能性がありますので、やはりその場で示談を進めるのは得策とは言えません。
2.過失割合が0の被害者は保険会社に対応してもらえない
自動車保険は、契約者に少しでも過失がある場合にのみ対応する契約になっており、過失割合が0の場合は保険会社に対応を任せることはできません。
その場合、被害者側は被害者本人が、加害者側は加害者が契約する自動車保険の担当者が交渉をすることになり、交通事故の示談交渉に対する知識や経験の差が出てしまう可能性が高いです。
示談金を用意する相手方の保険会社からすれば少しでも支払う金額は少なくしたいと考えるので、様々な理由をつけて最低基準の金額を提示してくるでしょう。
適正金額を支払ってもらうためには、示談で支払わせることができるものを全て調べ、その根拠となる金額を明確に提示する必要があります。
それが難しい、あるいは時間がかかって面倒というような場合は、弁護士に対応を依頼するという方法もあります。
ただし弁護士の費用が必要になるため、弁護士の働きで増額した補償金が弁護士費用より低い場合は、逆に受け取れる金額が下がってしまう可能性もあります。まずは無料相談から話をして、その際に増額の実績や費用について確認しておくと良いでしょう。過失割合がゼロであっても、保険の特約やオプション次第で使用できる弁護士特約もありますので、このような場合に使える補償があるかどうかも確認しておきましょう。
3.物損事故と人身事故による補償額の違い
車と車の事故でどちらにも被害があった場合、特に怪我等をした自覚がなかったため車の修理代のみの補償となって、後から後遺症などが出て治療が必要になる場合があります。しかし、すでに車の修理費のみで話が終わっていると治療費の補償がされない可能性があります。事故被害にあった場合は、その場では自覚のある痛みがなかったとしても、念のため病院で見てもらうべきです。何かしらの負傷があった場合に早期治療できるうえ、示談で治療費の請求ができます。
示談交渉を進める前に準備すること
上記の示談交渉の注意点でもご紹介したように、事故が起こったその場ですぐに交渉を始めてはいけません。必要な準備を揃えてから、示談交渉を進めるようにしましょう。こちらでは、事故があって示談交渉を進める際に準備しておく書類等を解説します。
物損事故を起こしたとき
物損事故を起こした際の示談交渉は、自動車の運転者が事故によって与えてしまった損害の金額が確定してからとなります。任意保険に加入しているのであれば、基本的には保険会社が間にはいっての交渉となるでしょう。準備しておく書類例は以下になります。
- 交通事故証明書
- 事故により損傷を負った車の修理費用見積もり書
- 事故車の写真
- 事故発生状況報告書
- 事故により損傷を負った建物等の修繕費用見積もり書
人身事故または他の車と交通事故に遭った時
人身事故にあった時、または他の車両と交通事故を起こした際の示談交渉は、被害者と加害者の保険会社または本人との話し合いになります。被害者側が怪我を負った場合に必要な書類が以下です。怪我や治療によって仕事ができない場合もありますので、その場合は休業損害などの補償内容を確認するため給与明細等の依頼をします。
- 交通事故証明書
- 事故により損傷を負った車の修理費用見積もり書
- 事故車の写真
- 事故発生状況報告書
- 診療報酬明細書
- 給与明細書
- 源泉徴収票
- ※確定申告書の控え
- 各種領収書
- 診断書
- ※後遺障害診断書
- ※休業損害証明書
被害者側が亡くなっている場合は、保険会社または被害者家族とのやりとりになります。被害者側は、下記のように亡くなったことを証明する書類を準備しなくてはいけません。
- 死亡診断書・死体検案書
- ※除籍謄本
- ※戸籍謄本
交通事故証明書について
交通事故にあったときや交通事故を起こしてしまったときは、交通事故証明書の発行をします。交通事故証明書は、交通事故の後の示談交渉の際に必ず必要になります。発行方法等を詳しく説明します。
交通事故証明書の用途
交通事故証明書は事故が発生したことを証明するための書類です。主に、自動車保険を利用する際や示談交渉の際に必要になります。事故の際に警察へ連絡をすると、現地に到着した警察が事故現場の確認や検証を行います。その後警察から自動車安全運転センターへ報告が上がり、交通事故証明書が発行できるようになります。
交通事故証明書は保険金の受け取りにも必要となります。また、保険を使わないとしても、交通事故を起こしてしまった(事故にあってしまった)際は、警察への報告を怠ってはいけません。物損事故であっても人身事故であっても、警察への交通事故報告義務違反は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金の罰則を受けることになります。
交通事故証明書の発行手順
発行するための申込方法ですが、郵送による申し込み、窓口での申し込み、インターネットでの申し込みの方法があります。
郵送による申し込み
申請用紙を自動車安全運転センター事務所など(警察署・交番・駐在所にも備え付けがあります)で入手し、必要事項を記入して、最寄りの郵便局の振替窓口で手数料540円を添えて申し込みます。
後日、証明書が申請者の住所または郵送希望先に郵送されます。
窓口での申し込み
申請用紙を自動車安全運転センター事務所などで入手し、必要事項を記入してセンター事務所窓口で手数料540円を添えて提出します。
基本的に即日交付されますが、事故資料が届いていない場合は後日、証明書が申請者の住所または郵送希望先に郵送されます。
インターネットでの申し込み
自動車安全運転センター事務所のサイト(http://www.jsdc.or.jp/index.html)から申請可能です。
※注意事項
・交通事故の加害者本人、または被害者本人だけが申請可能です
・警察に届出されていない場合は証明書を発行できません
交通事故証明書を発行しなかったらどうなる?
自動車保険の申請や示談交渉が進められない可能性があります。
また、後から発行しようとしても、人身事故の場合は事故発生から5年経過、物損事故の場合は事故発生から3年経過してしまうと、原則として交付を受け付けてもらえなくなるので注意しましょう。
まとめ
こちらでは、交通事故の後々の対応として必要になる示談交渉について解説しました。示談金の請求権は3年(ひき逃げの場合は20年まで引き伸ばされます)とされています。あまり焦って得られる補償金を減らさないよう注意しましょう。何よりベストなのは、そもそも示談が必要な状況にならないことです。普段から事故を起こさない・事故に合わない運転を心がけましょう。